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小夜子がずっと笑っている。
「よかったわ、広希さんもいいご友人に恵まれて。本家の狭い世界にいて、息苦しい思いをされてるんじゃないかと思っていたのよ」
「や、友人……っていうか、おれ今、思惟の声、急に聞こえなくなったんです。たぶん、美刀の仕業ですよね。おれ、手伝うって言ったのに……」
広希は何も言わず、現実世界へ戻してくれた。
こんな一方的な関係を、友人とは呼べない。
「お父さまに力がおありなら、本来ならまだご友人たちと転げ回っている年齢ですのに」
「あ……」
着慣れてしまっていたスーツ。登録のない携帯。
思惟たちも広希のやさしさの裏にあるものを見ているのか、彼にやたら懐いていて、本人も、やけに嬉しそうで。
「……っ、何だこれ」
気づくと、涙がこぼれていた。
小夜子がそっと人差し指をたてる。
「これ、広希さんには内緒ね。うちには昔、殺されちゃうから助けてくださいって、幼い広希さんに頼まれて父が連れてきた思惟たちがいるの」
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