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「あー……、やりそうだ、あの人なら」
「その子たちを守るためにわたし、見えないふりをしているの」
「そう……だったんですか」
「普段は眠っているけど、時々ね、起きて泣いちゃう子もいるのよ。広希さんがいないって」
「あ……」
「父に頼んで連絡すると、広希さんはね、精神世界のほうで会いに行くみたい。そばにいるよ……って」
あの白い世界で、思惟と向き合う広希は、そんな悲しい嘘をつくのか。
また涙があふれてくる。
すこし笑って、小夜子がひとりにしてくれた。
気持ちを抑えきれず、携帯を開く。すぐに文字を打ち、送信した。
(昭人です。一人で苦しまずに連絡しろ。おれも、たまにメールする。電源入れとけよ!)
「気づくかな……」
小夜子さんも美刀もおれも、あんたのためにできることをしたいと思ってる。
だから、ひとりで戦うな。
祈るように、携帯を握りしめる。
こんな気持ちで誰かにメールしたのは、初めてだった。
―おわり―
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