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まるでそこにいるのを知っているように、男が真っ直ぐにこっちを見て微笑んだ。低くて綺麗な声をが宥めるように背中を撫でた。
「ね?」
射すくめられたように動けなかった。ベッドに戻れと命令する頭と、鍵をゆっくりと外す指。ちぐはぐなオレの耳にカシャンと鍵の外れる音が響く。
滑り込む男の身体、後ろ手に鍵を掛けてチェーンをひっかける。
逃がさないつもりなんだと気づいて、そんなつもりはないのにと笑い出したくなる。
逃げれるものか。
成すすべもなく男の顔を見上げた。
真っ直ぐに伸びた腕が蔦のように絡みつく。
体温が伝わって、これは夢じゃないんだと囁いた。
「どんな風にしてほしい?」
服の上から体を撫で回す指に声を殺した。
喘ぐ姿を笑われて、軽蔑されたらと思うと怖くて仕方がない。
声を殺したオレは勃つことが出来なくて、男の指にも反応しなかった。
ガチガチのオレの身体を見て、男が首を傾げて聞いた。
「ね?もしかして、したことないの?」
びくりと震える身体が答えだった。男が楽しそうに微笑む。
「へえ。いいね。」
ベッドに導かれて下だけを剥かれると男が持って来たローションを後ろになじませていく。
慣れた様子で使いきりのローションを中に流し込まれて、小刻みに体が震えた。
出そうになった声を必死で堪える。
「硬いね。こっちは自分でもしたことない?」
指を滑りこませて後ろをいじりながら男が耳元で囁く。
こくこくと頷くと、歯が軽く耳を噛んだ。
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