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ぐっと何かが詰まって、涙が出そうになる。
せめて女だったらと思う自分が恥ずかしい。もう少し綺麗だったらとか。
後ろめたくて目を逸らした。
目の隅に男の唇が綻ぶのが映る。
はっとして視線を戻すと、綺麗な顔が微笑んでいた。
すごく…………
馬鹿だな。
おどおどと頭を下げて、全力で走らないように自分を戒めながらその場を離れた。
もう少しオレが若ければ……女ならば。恋焦がれることを許されたのか。
嘘つきめ。どうしようもなく、もう好きになっているじゃないか。
はあってため息をつくとベッドに横になる。
横になる前にカーテンを閉めればよかったのに、閉め忘れた。
灯りを消せばよかったのに、消し忘れた。
そして今、いろいろ絶望して起き上がる気力がない。
さっき感じた疼きは心臓を刺して……それから胃を伝わって下半身に降りてくる。
ころりと身体を横にすると、主のいない向かいの部屋を見る。
きっちりと着たパジャマの生地に手を這わせて、かすかな溜息をついた。
指が、もう大きくなりかけている自分の上で止まった。
男を思い出しながら、ゆっくりと自分を慰め始める。
「はあっ……ん……ああん。」
恥ずかしいくせなんだが、オレは喘がないとイケない。
おっさんが喘ぐなんてどうなんだと思うんだが。
でもそうしないといつまでも終わらない。
頭の中で男がなじるような目でオレを見る。
冷たい目に綺麗な身体。後ろを犯される想像に、前が大きく膨らむ。
「んっ……あっ……き、きもちい……ああ……やあっ。
ん、んっ……いきそ……ああん……んーっ。はあっ……ああん。」
AVの女優のような喘ぎ声が口から漏れる。
強い快感に意識が飛びそうになる。
なんだろう、いつもよりすごく感じる。
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