第1章

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 朝方、少年がゴミ出しをしているとき、仲良く散歩している親子とすれ違った。次は夕方、少年が学校から帰る途中、今度は騒がしく、そして忙しく口や手を動かす親子と遭遇した。このとき、少年はまじまじと母親のありさまをじっくりをなめるように観察した。だから傍観者ではない。  そして、この日出会った二組の親子はとても対照的であったため、少年の脳はその日半分の記憶をこれに充てた。ちなみにもう半分の記憶については、後ほど伝えることにしよう。    二組の親子の連れた子供はそれぞれ、朝方一人、夕方五人だった。親の教育方法に違いはあれど、余裕は人数が多いほどに失われていく。そこに少年は目を付けた。    人は余裕があればほかのことに考えが向く。つまり、知っている知識が少ないならば、その中で精一杯のものを創造する。知っている知識が多ければその中から自分で選んで考えて創造する。この違いは大きくなって発想を妨げていく。  少年はそして、いきづまったとき知識不足における発想の壁を超えるために、最低限の文献しか見ないことにしている。
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