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いつも少年は思考を繰り返す。
例えば、こんな具合に。人の楽しみは物事が分かることでも、分からないことでもない。思考の先に理解がある時、また、思い込みが覆されたときである、と。
少年が育った家庭は、とりわけ変わった環境ではなかった。ただ、彼の父は読書家であったため、家にはたくさんの本がある。特にヨーロッパ文学のものが多かった。
しかし少年はそれのどれも読んだことはない。少年は、本棚にある数々の本の題名を見ながら、どんな話かを想像しながら、自分の作る話へとそのひとかけらを流し込む。
彼の作る物語はまだまだ荒削りであった。が、彼は日々の創造性を武器に、そして、自分のつかえる、ありったけのワードを駆使し、執筆に取り組む。
彼が何故本を読まないのかには、彼なりの考えがあった。人は、年齢を重ねるにつれて、頭が固くなると年上の人はよく言う。以前少年はその言葉にずっと頭を悩ませていた。もちろん普通に考えれば、脳の老化と考えるのが自然であるはずだ。
しかし、少年はそれひとくくりにしたくなかった。何か別の理由があるはずだ。このことを考えるにあたり、まず少年はあることに思い当たった、それは大人と子供では知識の量が違うということだ。大人はいっぱい知ってるし、大人の言うことは、子供には理解できないものかもしれない。もしかしたら、この言葉も自分たちを皮肉って言っているのかもしれない。しかし、少年は今もあまり本を読まない。「大人の言葉」に対する解決の糸口はそこではないと感じ取っていた。
そんなことを考えている折、少年はある光景を目にしたのだった。
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