レンタルフレンド

2/9
前へ
/18ページ
次へ
 近くの駅前にあるカフェに来てもらうことにした。  店の外の張り出しテントの下にテーブルが置かれていて、目印である文庫本を二冊つみあげて待つこと15分、30代とおぼしき女性がやってきて、 「お待たせしました。人材サービス社の者です」  とお辞儀した。  ぼくはコーヒーをこぼしそうな勢いで立ち上がり、 「あ、あ……コチラコソヨロシク」  と噛みながら応じた。 「すてきなお店ですね」  女性はニコニコと笑顔を見せると、丸テーブルの向かい側に腰かけた。  ぼくは反射的に、親しげなレンタルフレンドの態度をつい警戒してしまった。親しげに近づく人間にろくな奴はいなかったから。なにかを売りつけられたり、言いがかりをつけられたり。 「そ……、そうですね」 「今日はよろしくお願いします」  名刺を差し出した。  それを受け取り、なんだか生命保険の勧誘員と対しているような気分になった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加