レンタルフレンド

3/9
前へ
/18ページ
次へ
 ウェイトレスがやって来て、「ご注文はお決まりですか?」と、テーブルにお冷やとおしぼりを置いて訊ねる。 「ホットコーヒーを」 「かしこまりました」  ウェイトレスが行ってしまうと、 「天気が良くてよかったですね」  落ち着いているが、若い声で言う。  ええ、まあ……とぼくは応じる。 「仕事、早く見つかるといいですね」  スムーズに話ができるよう、ある程度のプライベート情報は伝えてあった。 「はい。いま、探しているんですが、なかなか……」  ぼくは後頭部を手で押さえる。 「きっと見つかりますよ」  見え見えの気休めだった。職につくなんてそう簡単にはいかないが、レンタルフレンドにしてみれば、そう言うしかないのだろうが。 「今は無職で貧乏なもんだから、もしお金持ちになったらって、あれこれ想像したりするんです」  ぼくは電子マネーカードのことを言わなかった。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加