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「玉鋼……ターミネートモードを上位端末に申請……サーバー『雫』を経由した上で承認。特壱級ターミネートデバイスの転送を要請及び演算補助として『雫』の貸与を申請。全力を持って例外級精霊を排除します」
途端に、彼女の兵装の周りに更に装甲が構成される。それはまるで、蜻蛉の薄く長い羽根のようだった。
エネルギーのチャージまで一〇秒はかかっただろうか。萌葱色の光が鈍の少女を消し去ろうとするが、直前でシュタインの手によって射線をずらされる。
それはもう、”抉りとられる”という範疇の話ではなかった。射線上にあったアスファルトが蒸発して、最早アスファルトがあった気配すらなくなっていた。
鈍の少女は、今度はそれを一瞥するまでも無く一撃を加えようとしていた。
充填が完了していないものの、引き離し距離を確保するために鋼色の少女は鈍の少女に向けて 再び光を放った。接射である故、大破は免れないであろう。
砲口から放たれた幾筋もの光は、鈍色を貫き風穴を空け――
無かった。
自分が目にしたのは、砲身自体が穿たれ、また、鋼色の少女の肢体も光に穿たれている光景だった。
鋼色の少女は何が起こったか状況が把握できていないようだった。勿論自分も把握できていない。
ようやく自分が穿たれたということを把握した少女もまた、悲鳴とも嬌声とも取れぬ声を上げた。
腰を震わせて、膝から崩れ落ちる。
鉄屑の華の中央に残されたのは、やはりそれらを一瞥する鈍の少女だけだった。
その少女は視線をこちらに向ける。それに共鳴するように、心臓が高鳴り激しく脈打ち熱を帯びる。――意識はそこで再び途切れた。
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