第2章

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彼女は慣れない手つきで煙草をくわえたので、俺は彼女煙草の先に火をつけた。 すると彼女は、躊躇することなく一気に煙草を吸い込んだ。 「ぶっ、げほっ、ごほっ」 そして案の定激しく噎せ返る。 「大丈夫?」 喉元を押さえて咳き込む彼女の顔を覗き込むと、目を真っ赤にさせて涙ぐんでいた。 「この、こほっ、煙草、課長と一緒なんです」 あー、そういえばそうだった気がする。 「無理して吸わなくてもいいよ」 彼女の指の間から強制的に煙草を取り上げると、灰皿に押し付けた。 灰皿から彼女に視線を移すと、瞳は水分で薄い膜が張っていた。 小早川さん……、もしかして泣きたかったのかな。だから吸えもしない煙草を吸ったのか。
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