第2章

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眼鏡の奥の目の縁に涙をいっぱい溜めて、一度でも瞬きをしたら零れ落ちてしまいそうな彼女。 「泣いていいよ」 「え?」 ビクンと反応した体と同時に左の目から一筋の涙が零れた。 「泣きません」 泣いているくせに、強がりを言う。 「俺の前で強がらなくていいよ、もう一度君の涙見てることだし」 「嫌です、泣きたくない」 そう言っている彼女の声は既に鼻声で、眼鏡の下では涙が次々に滴となって頬を伝っている。 「泣き虫ー」 わざと子供っぽく茶化すように言うと、彼女はフッと笑って眼鏡を外した。そして、天井を仰いでおしぼりを目の上に置いた。 「なんでだろー、高坂さんの前で私、泣いてばっかり」 「ほんとだよねー、俺のこと軽蔑してるし嫌いなはずなのにねー」
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