第2章

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全身鏡を見て、自身をチェックする。 やっぱりこの服いいな。最近はめっきり服を買わなくなったから、この服は数年前に買った服だが、お気に入りで大事に着ている。 自然と陽気な鼻歌が漏れる。 ……って、デートじゃあるまいし、浮かれてどーすんだ。 食事の相手は愛莉の親友で不倫継続中の小早川さんだぞ。 鏡に映る俺の頬に、虚しいえくぼが浮かんだ。 マンションを出ると、歩いて待ち合わせ場所の居酒屋へ向かった。 陽が落ちたといっても、真夏の夜はまだまだ暑い。特に今夜は風もなく暑く湿った空気が全身に重くのしかかる。 居酒屋についた時には、にじみ出た汗が胸元を濡らしていた。 店の名前が印字されたネイビーの暖簾をくぐり、曇りガラスの引き戸を開けると、途端にヒンヤリとした冷風が流れてきて火照った体を冷やしていく。
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