第2章

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「いらっしゃいませー、おひとり様ですか?」 男性店員の威勢のいい声に、「待ち合わせなんですけど」と返したとき、店の奥から小早川さんが俺の名前を呼んだ。彼女は仕事以外は眼鏡なんだな。 「あ、待ち合わせですねー、どうぞー」 手を上げる彼女の元へ足早に向かうと、彼女も一旦家に帰ったのかラフな格好に着替えていた。しかもこの間と同じ眼鏡姿だ。 「いやー、夜になっても蒸し暑いねー」 手団扇をしながら彼女の前に座ると、彼女は冷えたおしぼりを差し出した。 「ありがと」 いつもの通り一番に首元を拭くと、彼女は小さく吹き出した。 「ん?」 「いえ、首から拭くなんて高坂さんらしくないな、と思いまして」 「え?そう?俺はいつも首からだよ」 首を拭きながらあっけらかんと言うと、彼女はイタズラに口元を引き上げて言った。
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