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「どうせ飯食ってないんだろ?」
一馬はそう言うと、二階から一階に向けて大きな声を上げる。
「かーちゃん、楓の分もよろしく」
「そんな、いいよ」
慌てて止めたけれど、おばさんが階段の下に顔を出した。
「よくないの。楓は育ちざかりなんだし。あ、俺もね」
クスクス笑う一馬は、私の気持ちを持ち上げようとしてくれている。
「楓ちゃん、なんにもないけどいいかい?」
「おばさん、いつもすみません」
「気にしない、気にしない。どうせたいしたおもてなしできないしね。漬物ステーキはあるよ」
一馬のお母さんは、私の家の事情を知っていて、いつも気にかけてくれていた。
「漬物ステーキはさ、ステーキって名前だけど、ステーキじゃないからさ。飛騨牛とかないわけ?」
「バカな息子だよ。飛騨に住んでるからって、いつもいつもそんな高いもん食えるわけないだろう」
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