2276人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
調子に乗った一馬が、お母さんにピシャリと叱られるのを聞いて、思わず吹き出す。
漬物ステーキは、漬物を焼いて卵でとじた、ここの土地独特の食べ物だ。
「あ、石豆腐もあるから、豆腐ステーキもできるわ」
「だから、肉はないのかよ」
「豆腐は畑の肉って言うだろう?」
おばさんの勝ち。
石豆腐と言われるとても硬い豆腐も、この地方独特のものらしい。
だけど、ずっとここで育った私達は、大きくなるまで誰もが食べているものだと思い込んでいた。
私は一馬の家で優しい家族に囲まれて、辛い時間を忘れようともがいた。
父と母のケンカは、時には何日も続くことがあった。
「ごめん、知樹。また来ちゃった」
「だから、いつでも来いって言ってるだろ? どうせまた我慢したんだろ」
私の沈んだ顔を見て、知樹は優しく笑う。
最初のコメントを投稿しよう!