初恋は、幼馴染と

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調子に乗った一馬が、お母さんにピシャリと叱られるのを聞いて、思わず吹き出す。 漬物ステーキは、漬物を焼いて卵でとじた、ここの土地独特の食べ物だ。 「あ、石豆腐もあるから、豆腐ステーキもできるわ」 「だから、肉はないのかよ」 「豆腐は畑の肉って言うだろう?」 おばさんの勝ち。 石豆腐と言われるとても硬い豆腐も、この地方独特のものらしい。 だけど、ずっとここで育った私達は、大きくなるまで誰もが食べているものだと思い込んでいた。 私は一馬の家で優しい家族に囲まれて、辛い時間を忘れようともがいた。 父と母のケンカは、時には何日も続くことがあった。 「ごめん、知樹。また来ちゃった」 「だから、いつでも来いって言ってるだろ? どうせまた我慢したんだろ」 私の沈んだ顔を見て、知樹は優しく笑う。
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