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人の波がひと段落すると、私達も歩き始めた。
雪は、しばらくすると雨に変わった。
「夜祭も無理だな」
「そうだね」
夜祭は、昼とは違う魅力がある。
夜祭では、百個もの提灯を灯した屋台が街を練り歩く。
途中、宮川に掛かる中橋に差し掛かると、水面(みなも)に映る提灯の炎が、キラキラと煌めいて、なんとも言えない趣がある。
「道行き」という"囃子歌"を歌いながら、再び中橋の付近まで戻ってくると、「高い山」という“曳き別れ歌”にかわり、各屋台蔵へ帰っていく。
夜祭も毎年楽しみにしているけれど、この雨では無理だろう。
「一馬のホテルに、行こうか」
「うん!」
高山祭のときは、どこもかしこも満室になる。
来年の予約が、明日始まるほど。
だけど、一馬の顔のおかげか、無事に予約が取れている。
「そういえば一馬、十八時に仕事終わるらしいぞ。ホテルの日本料理店に予約入れてくれてあるんだってさ」
ふたりで肩を並べて歩いていると、知樹が一馬からのメールを見せてくれる。
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