2271人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
「天気が良ければ、もっと見えたのに」
知樹の言う通り。
だけど、こうして知樹と一緒に、同じ景色を見られることに価値がある。
窓に駆け寄り景色を眺めていると、知樹が私を後ろから抱き寄せた。
「俺達の街」
「うん」
知樹は私の肩に顎を乗せ、囁く。
間近で感じる彼の息づかいに、クラクラする。
「ここでずっと一緒に暮らそう」
互いに一度高山を出て、都会の便利さも知った。
刺激も多く、華やかな世界には違いなかったけれど、やはり安らげるのは、生まれ育ったこの土地。
「待ってる」
「あぁ」
知樹はこんなに甘い人だっただろうか。
会えない時間が、私達の「好き」を加速させた。
「さて、一馬オススメの風呂に行こうか?」
「うん!」
振り向いた私の額にキスをした知樹は、にっこり笑った。
最初のコメントを投稿しよう!