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七階の温泉は、絶景だった。
一番端にあった風呂は、大きな窓に面している上、お湯が浴槽から溢れ出ていて、まるで空中に浮かんでいるかのように感じる。
一馬の顔を見るために、何度かラウンジには来たことがあったけれど、こんなに素敵な温泉があるとは知らなかった。
他にも、岩風呂や樽風呂などもあり、のぼせてしまいそうだった。
三十分ぐらいは浸かっただろうか。
お湯が少し熱めのせいで、体が真っ赤に染まってしまった。
もう少し入りたい気もしたけれど、それよりも知樹と一緒に過ごしたい。
慌てて髪を乾かして部屋に戻ると、知樹はもう戻っていた。
「ごめん、遅くなっちゃった」
「いや、もっと入ってくると思ったのに」
知樹は、冷蔵庫からペットボトルのミネラルウォーターを取り出して差し出した。
「ありがと」
冷たいミネラルウォーターが食道を下りていくのがわかるのは、体がホカホカなせいもある。
四分の一ほど飲んだところでふたをしようとすると、「俺も」と私の手からそれを奪っていった。
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