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「そろそろ準備しないとな」
しばらく抱き合い、互いに愛を確認した後時計に目をやると、十九時を指していた。
ベッドから先に出た知樹は、散らばっていた私の服をとってくれる。
あんなに激しく抱き合ったというのに、なんとなく照れくさくて、シーツに潜って着替えていると、「今更だよ」と知樹がクスクス笑う。
たしかに、もう全部見られているけど、冷静になると、やっぱり恥ずかしい。
「あっ、一馬からメール入ってる」
スマホを確認した知樹が、着替え終わった私にスマホを差し出した。
「ヤダ」
「まったく」
だってそこには……。
【仕事終わったぞ。部屋まで行こうかと思ったけど、イチャついてたらムカつくからラウンジにいる】
「あいつは、言葉をオブラートに包むってことを知らない」
知樹は呆れ声を出すけれど、本当はそうではないことを知っているはず。
これが、一馬なりの、優しさだから。
そうやってあえて“ムカつく”と言ってもらえるから、ふたりでこうして宿泊することもできる。
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