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「ほんともう、嫌味なヤツ」
一馬の膨れっ面は、いつものこと。
「ねぇ、これって一緒のテストだよね?」
「楓までそんなこと言う! お前は何点なんだよ」
「教えない」
「なんだよそれ。そんなわけに取れるわけねーだろ」
一馬はムキになって私のカバンをひったくり、テストを取りだした。
「はぁ……」
「どうした、一馬」
知樹が不思議そうな顔をして一馬を見つめる。
「お前ら、ふたりともムカつく」
落胆している一馬からテスト用紙を取り上げた知樹は、ゲラゲラ笑いだした。
「おー、やっぱり同じテストじゃん。沢井(さわい)楓、八十二点」
「知樹に負けちゃった」
時々、勝てるんだけど……。
「俺、一馬にも勝った」
知樹はニヤリと笑う。
「って、ちっともうれしそうじゃないじゃん。くそー。お前らカンニングだろ」
「わけねーだろ」
高校生活は順調だった。
だけど、どうしても家では安らげなかった。
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