初恋は、幼馴染と

16/40

2276人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
「一馬」 「なんだよ、楓」 「今日さ、お父さんがね」 「なに?」 頬が勝手に緩む。 久しぶりにうれしいことがあったから。 「名古屋に出張したお土産って、これくれたの。バナナクリップってヤツ」 「バナナもらって喜んでるのか? お前、サルか」 「だーかーら、違うって。バナナクリップ。こうやって髪を止めるの」 父が私のためになにかを買ってきてくれるなんて、いつ以来だろう。 高山にももちろん買い物できるところはあるけれど、お洒落な雑貨を買いに行きたいとなると、名古屋や岐阜、もしくは富山まで出ることが多かった。 だから、"雑誌で見たこれが欲しい"と思っても手に入らず、時々買い物に行ってきたという友達をうらやましく思っていた。 もうその頃になると、家族で出かけるということがなくなってしまっていたから。 「バナナじゃないのか。よく似合ってるよ、楓」 「うふふ。そうでしょ」
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2276人が本棚に入れています
本棚に追加