初恋は、幼馴染と

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「だけど、元々別の人間が一緒になるんだ。うまくいかないことだってある。楓の家は今そんな状態。結婚って、確かにいいことばかりじゃないよな。でも……未来が詰まっていると思うんだ」 「未来?」 そういえば、父と母と三人の未来について、考えたことがない。 というか、考えられない。 「そう。ひとりでは知ることができない世界が、いっぱいだ」 知樹は薄い唇を少し上げて微笑む。 「たとえば、自分にはちっとも興味がなかったことでも、パートナーが心動かされるのを見て一緒に感動したり、ひとりでは行ってみようともしなかったところだって、ふたりだと行きたくなったりする。それで……」 そこで彼は口をつぐんだ。 「知樹?」 「そうやってふたりに子供ができたら、今度は三人分の幸せがやってくるんだ。楓の父さんと母さんは、今まであまりにも幸せだったから、小さな幸せに気がつかなくなってしまったのかもしれない。でもな……」 「知樹……」 ポロポロこぼれてくる涙が、ひとつふたつと握りしめた拳に落ちていく。
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