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そうなのか、な?
知樹のいたわるような優しい言葉に、辛い日々が溶かされていくようだ。
「俺は結婚したいよ。たくさん幸せを見つけるんだ、楓と」
「私?」
「好きだ。楓」
知樹の言葉に震えた。
『好き』という、ストレートな言葉に。
もしもこの告白が一馬だったら、私はどう答えるだろう。
かけがえのないふたりを、天秤にかけるなんてこと、考えるなんて私……。
一瞬頭が真っ白になる。
でも……。
きっとずっと前から、自分の気持ちに気がついていたんだと思う。
辛かったことをひたすら忘れさせようと、明るく振る舞ってくれた一馬。
それとは対照的に今の状態を冷静に受け止めるように諭し、それでも父と母は私を愛しているのだと教えてくれ、その上で未来を見ようと言った知樹。
私がいつの間にか心魅かれていたのは……。
「一馬には渡さない」
「知樹……」
「楓は俺が幸せにする」
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