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「わらびもちなんて、知樹はいらねぇか」
「いる」
「男にはおごらねーぞ。特に隠し事してるやつには」
知樹が一瞬ハッとした顔をした。
だけど、一馬が私達の関係に気がついているのだと悟った彼は、苦笑しながら口を開いた。
「そうだな。隠し事してる」
「ムカつくな」
一馬の顔が一瞬ゆがんだ気がした。
おそらく、疑惑が確信に変わったからだ。
「ごめん。でも、テスト前に言ったら、お前また赤点取るだろ?」
「言っても言わなくても取るさ」
「プッ」
だけど、一馬はいつものように、おどけてみせる。
「俺、楓と付き合うことにした」
「違うぞ。付き合ってもらうことにした。の間違いだ」
一馬は外を歩く観光客に視線を向けたままそう言った。
いつになく、真剣な表情で。
「そうだな。付き合ってもらうことにした」
「それで楓は?」
一馬は目の前に出された水の入ったグラスに視線を移して、私に尋ねる。
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