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「えっ?」
「イヤじゃないんだな」
一瞬だけ私を見つめた一馬に小さくうなずいてみせると、彼は水を口に運んだ。
「知樹」
「なんだ?」
「お前ら、わかりやすすぎ。急によそよそしくなるし、変な距離あけるし」
そんなつもりはなかったのだけど、長い付き合いだ。
ちょっとした変化に気がついたのかもしれない。
「そうか?」
知樹も疑問の声をあげる。
「お前、わかってるんだろうな」
「あぁ」
ふたりは会話を進めるけれど、なんの事だかわからない。
「楓を泣かせたら俺、お前をフルボッコにする」
冗談なのか本気なのか、一馬は表情を変えることなく、そう言い放った。
だけど、それが一馬なりの祝福の仕方なのだ、きっと。
「そんじゃ、今日は知樹のおごり!」
「なんでだよ」
それから少しも私と視線を合わせない一馬は、はしゃいでいた。
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