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一番最初に高山を去ることになったのは、一馬だった。
しばらく会えないからと、彼は私を誘った。
「すまんな。知樹、怒ってただろ」
「怒ってなんてないよ。だって、一馬とデートしてこいって言ってたもん」
「お前ら、つくづくムカつくな」
クククと笑う一馬は、私の前に出されたわらびもちを、勝手に一口食べた。
「ちょっと」
「ケチケチするなよ」
しばらく一馬に会えないなんて信じられない。
毎日のように一緒にいたのに。
「楓」
「ん?」
いつになくトーンの低い一馬の声を不思議に思いながら、わらびもちを口に入れる。
「俺さ、お前の事好きだった」
わらびもちを噛むことを忘れるくらい、驚いた。
まさか、今になって一馬からこんな告白をされるとは、思ってもいなかったから。
目を合わせられなくてうつむくと、「飲み込むなよ? のどに詰まるぞ?」と、彼はクスクス笑う。
指摘され、やっと噛みはじめると、「まったく、世話が焼ける」とまた笑われてしまった。
だけど……。
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