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「まぁ、そういうことだ」
「一馬……」
私はなにも言えなくなった。
なんとなく、そんな感じは受け取っていた。
だけど……知樹との交際を告白したあとも、変わらず私達と付き合いを続けてくれたから、それは思い違いなのかもしれないと思っていた。
「あれだ。気にするな。ちょっと傷ついた位だし」
一馬は私の顔を見て優しく笑う。
そして、「だからもうひとつくれ」と言いながら、わらびもちを奪っていく。
これが一馬なりの気の遣い方。
「けじめをつけたかった。あれじゃん。都会に行くときれいなおねーちゃんいっぱいだろ。そうしたら俺も恋とかしちゃうわけ。ずっと楓のことを引きずっていたら、チャンスを逃しちまう」
おどけて言っているのに、少し目は悲しげで。
「だけど、楓はずっと俺様の家来。俺様の勉強がピンチな時は、飛んできて楓も手伝えよ?」
「家来ってなによ」
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