初恋は、幼馴染と

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毎年四月に行われる、飛騨高山の山王祭。 旧高山城下町、南半分の氏神様である日枝神社の例祭である山王祭は、秋の八幡祭と合わせて日本三大美祭と言われている。 四月なだけに、桜が満開の中で……となれば素晴らしいのだけれど、残念ながら今年は寒くて空の雲も厚い。 「ねぇ、一馬。雨、降りそうじゃない?」 「ちょっと雲行きが怪しいな。雨だと即中止だろう?」 からくり屋台はとても雨に弱く、今までにも何度か中止になってきた。 中止は仕方がないとはいえ、私達のような地元の人ばかりでなく観光客や、中には海外から見に来た人たちがたくさんいて、かわいそう。 「あっ……」 私が空を見上げた瞬間、頬に冷たいものが。 「おい、楓。これって雪?」 「ほんとだ。どおりで寒いと思った」 パラパラと舞い始めた白い雪は、すぐにその量を増していく。
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