初恋は、幼馴染と

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一馬は優しい。 知樹と付き合うことになって、結果的に「男」としての一馬は拒否している。 それなのに、まだ飛んでこいと言ってくれている。 「あとは、知樹とケンカしたら、また俺んとこ来い。うまい漬け物ステーキ用意してやる」 「ステーキなら飛騨牛にしてよね」 「あはは」 実に一馬らしかった。 彼の優しさが身に染みた。 一馬の旅立ちの日。 私と知樹は一緒に高山駅まで見送りに出た。 「大袈裟な。知樹なんてあっちに行っても近所だし、楓もいつだって会えるだろ?」 一馬はそうやって笑ってみせたけれど、毎日のように時間を共有してきた私達にとっては、ほんの少しの別れも辛いもの。 「知樹、ちょっと」 「なんだよ」 一馬が知樹を呼んでなにやら耳打ちすると、知樹は小さくうなずいた。 「なに?」 「なんでもないさ。それじゃあ、今度は名古屋で」 爽やかな笑顔を残して、一馬は去っていった。
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