未来は、きっとあるから

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「おかえりなさい、沢井さん」 久しぶりの白衣は、緊張するものだ。 全治三週間と診断された指の凍傷は、三ヶ月経った今、動かすことに支障はなくなったけれど、多少皮膚の変色は残ってしまった。 それでも、こうしてナースとしてふたたび働けることの喜びが、私の気持ちを向上させた。 「ご迷惑をおかけしました。また、よろしくお願いします」 頭を深く下げると、涙ぐんでくれる同僚もいる。 「無理したらダメよ。いくらでもシフト変わるから」 「ありがとう」 こんなに穴をあけたのに、同僚の優しさが身に染みる。 「沢井、おかえり」 「木原、先生……またよろしくお願いします」 あれから、皆、私達に恋心が芽生えたと勘違いしている。 ずっと前からだったのだけど。 それでも、知樹の誠実さを知っているここの人達は、誰も反対しなかった。
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