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「いつか、三人で来ような」
「知樹……」
それはあの時の……。
「結婚、してほしい」
体が震える。
この日をどれだけ待ち望んだか。
「……はい」
やっぱり私は泣き虫だ。
こんなにうれしいのに、涙が溢れてきて頬を伝う。
「もう二度と、楓を離したりしない」
「……うん」
彼の手が私の顎に優しく触れて……温かいキスが降ってきた。
「いらっしゃいませ」
驚くことに、予約してあったのは、飛騨牛だけではなかった。
「ご宿泊でございますね」
「はい」
済ました顔で私達を接客する一馬が、キャンセルの出た部屋を確保してくれたらしい。
「からくりはご覧になりましたか?」
「はい。堪能しました。働いている親友には、申し訳ないのですが」
ふたりの会話に、吹き出しそうになる。
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