未来は、きっとあるから

16/19
前へ
/324ページ
次へ
「それで、どの子?」 突然知樹が小声で話し出す。 「その件は、プライバシーがございまして……」 と言いつつ、一馬の視線はラウンジに一瞬向いた。 「なるほど、ラウンジですね」 「いえっ、違いっ……」 知樹がクククと笑う。 一馬は最近、ホテルの女の子に告白されたと言っていたけれど、きっとその子のことだろう。 「コーヒー飲みたいな、楓」 「うん」 「はぁ」と盛大な溜息を漏らす一馬は、観念したようだ。 「それではラウンジへどうぞ。言っておきますけど、一番かわいい子ですから」 私達の部屋の鍵をくれた一馬は、なぜだか自慢顔。 「えっと、進展は?」 「ございましたが、なにか?」 他の客には見えない様に、下の方で親指を立ててみせる。 それじゃあ……。 彼女ができたんだ。 一馬はあれから、「楓に謝られるほど、落ちぶれちゃいない」と言うのが口癖で、私と知樹の応援をしてくれるようになった。
/324ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2306人が本棚に入れています
本棚に追加