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「楓。すごく残念だけど、楓のお父さんとお母さんはそういう運命だったのかな。だけど、楓が生まれてきてくれたことは、きっとふたりの最大の喜びだったはずだ」
泣きじゃくる私を強く抱き締める知樹の手が、少しだけ震えている。
「楓、大丈夫だ」
「知樹が守ってくれる?」
「そう約束したじゃないか。楓はひとりじゃない」
私をそっと離した彼は、澄んだ瞳で真っ直ぐな視線を送る。
彼の瞳に私が映っている。
知樹は、私を見ていてくれる――。
「ごめんなさい。強くならなくちゃ、知樹だって心配するのに」
「楓は甘えるのが下手だなぁ。俺に遠慮なく寄りかかればいい」
本当に知樹と心が繋がったと思えた瞬間だった。
一馬がいたこともあって、私達はどこか気持ちにブレーキをかけていた。
だからキスも、知樹は無理にしようとはしなかった。
でも、もう知樹を求める気持ちを止めることができなくなっている。
それは多分、私だけでなく彼の方も……。
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