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「ごめん。ひとりになりたい」
私は話し合いの途中で席を立った。
父と母の離婚を受け止める覚悟はできていた。
だけど、高山に私の家がなくなるなんて、想定外だった。
一緒に来てくれた知樹と部屋に入ると、どんどん楽しい思い出があふれだしてくる。
どか雪の降った日、雪かきを手伝いながら知樹や一馬と雪合戦をして全身ずぶ濡れにしたこと。
買ってもらったばかりのカラフルな長靴を自慢したら、一馬の長靴の方が派手だったこと。
学校の帰り、猛吹雪になってしまった時、私の前を知樹と一馬が歩いて風避けになってくれたこと。
古い町並みでふたりと一緒に煎餅を焼いて食べたこと。
春の山王祭でからくりが見えない私を、知樹がおんぶして見せてくれようとしたこと……。
大好きだった。この街が。
知樹と一馬のいたこの街が。
「楓」
知樹は優しく私の肩に触れた。
その瞬間、大粒の涙がポロポロこぼれ始める。
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