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大学生活は順調だった。
毎日のように電話やメールをくれた知樹のおかげで、父が東京に去った日も、母が三重に行ってしまった日も、大きく崩れずにすんだ。
「一馬も元気にしてるぞ」
知樹はそう教えてくれた。
一馬は知樹に遠慮してか、私には直接連絡してこなかった。
看護大学で、友達ができた。
知樹と一馬とばかり一緒にいた私にとって、女の子の友達というのはとても新鮮だった。
楽しかった、とても。
高山を去るときの辛い気持ちがどんどん薄れて来るのがわかった。
でも、高山を忘れてしまいそうで、少しだけ怖かった。
「はぁ、専門用語が難しすぎる」
「あはは、俺も」
すっかり医大生になった知樹は、日曜になると時々遊びに来てくれた。
「知樹は賢いんだから、そうでもないくせに」
「そんなことないぞ。教授が言ってた。お前たちは患者の命を預かるんだ。"ちょっとミスした"なんて許されないって」
「そうだね」
それは私も同じだった。
ドクターよりナースの方が責任は軽いのかも知れない。
だけど、患者の命を預かるのはどちらも同じ。
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