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曇った天気の下、なんとか行われた御巡幸は、何度見ても厳かで心が洗われる。
屋台を中心に神輿、大名行列、獅子舞、闘鶏楽(とうけいらく)と言われる鳥の恰好をして歌い踊る神楽を堪能すると、塞いでいた気持ちが上向いてきた。
この祭を見るたびに、高山に生まれてよかったと思う。
外から来た人には、随分保守的な土地柄で新参者には住みにくいなんてよく言われるけれど、こうした伝統文化が根付いているせいなのかもしれない。
「さて、団子のお時間」
「一馬、時間あるの?」
時計をチラッと確認しながら尋ねる。
「当たり前だろ。楓姫に合わせて時間をお取りしましたけど?」
「よろしい」
「お、上から来たぞ」
一馬は市内のホテルに勤めている。
年に二回の掻き入れ時のはずなのだけれど、無理をして休みをとってくれた。
最近夜勤が続いていたのは、そのせいなのかも。
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