2276人が本棚に入れています
本棚に追加
/324ページ
私と一馬と知樹はいわゆる幼馴染。
同じ高山に生まれ、小学校から高校まで同じ。
家も近所でよく一緒に遊んでいた。
私達が住んでいたのは、古い町並みからは少し外れた所。
丁度春の高山祭と言われる山王祭で有名な日枝神社のすぐ近くで、有名な観光地、古い町並みには、散歩に行けるほどの距離だった。
だから私達の遊び場は、いつも古い町並みで、すべての店を知り尽くしている。
私の家は両親の仲があまり良くなく、家でケンカが絶えなかった。
ケンカのたびに、どちらかの家に転がり込んでは、自分の居場所を確保していた。
そんな事情を知っていたふたりは、いつも私に優しかった。
「またケンカか?」
「うん。ごめん」
「楓が謝ることじゃないさ」
一馬に泣きつくと、頭を撫でてくれる。
「でも、いつも一馬に迷惑かけてるよね」
「バカだな。俺も知樹も迷惑だなんて思ったこと、一度もないさ。楓、もう今日のケンカのことは忘れろ」
「えっ?」
「イヤなことは忘れるのが一番。くよくよしたって仕方ない。楓がなんとかできるもんじゃないだろう?」
一馬の言葉に、一旦はうなずいた。
だけど……今日のことは忘れられても……。
最初のコメントを投稿しよう!