第1章・10年待ってて下さい

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その時の私は、景太の告白をはっきり拒絶できなかった。 『ありがとう。景太君の気持ちは嬉しいし光栄よ。でも今は、勉強や学校生活に集中してね』 そんな言葉を伝えて曖昧に濁した。 まさか私への思慕が本当に10年も続くなんて、思ってもいなかったから。 景太の恋心は、思春期特有のセンチメンタルな感情。 教育実習最終日の別れによる一時の昂ぶりで、そんな昂ぶりはすぐに冷める。 そう思ったから拒絶はせず、自分に恋人がいることも黙っていた。 私はその時すでに、今の夫と交際していたけれど……。
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