第2章・不妊症

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あの日のことは一生忘れないだろう。 初老の男性医師から夫の不妊症を告げられた、去年の夏。 「検査の結果、ご主人は乏精子症と診断されました。奥様には特に異常はありません」 私たちは夫婦揃って、医師の言葉を聞いた。 不妊の原因が自分にあると知った夫は、愕然としていた。 今思えば、私は席を外した方が良かったのかもしれない。 その方がわずかでも、夫のプライドは保てたような気がする。 医師と夫の二人だけで話していれば、夫も冷静に受け止めて治療を考えたかもしれない。
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