第2章・不妊症

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乏精子症は精子の数が決定的に少ない症状だ。 医師は治療法など今後のことも話そうとしたのだが、夫は受け入れなかった。 「今日はいったん帰ります。またご相談に伺った時は、よろしくお願いします」 夫はそう言うのが精一杯だったのだろう。 言葉こそ丁寧だったが、顔面は蒼白で手も震えていた。 病院を出た私たちは、すぐ近くの喫茶店に入った。 緊張で喉もカラカラだったし、お互いの動揺を少しでも静めたかった。 同じアイスティーを頼んだあと、夫は哀しそうな顔で私に尋ねた。 「由布香はどうしても子供が欲しい?」
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