流れ星

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楽しい日々ほどあっという間に過ぎるんだとこの時に知った。 俺は彼を迎えに来た車を見た時から大泣きした。そんな俺の背中を撫でながら彼はそれでも微笑んでいた。 最後は彼に抱き着いて離れようとしない俺を、母さんと父さんが引き離していた。俺は何回も約束だからなと叫んでいたような気がする。バイバイすらも言えない俺は、ずっと『またな、またな』と走り去っていく車が見えなくなるまで、追い駆けた。 あの車をちゃんと止められていたら、良かったのだろうか。 彼が最後に俺に言った言葉は、『ありがとう』と『さよなら』だった。 あの時、俺がもっと大人でちゃんとさようならと言えていたら、こんな苦しい思いはせずに済んだのだろうか。 彼が帰って、一週間、俺は親と口をきかなかった。 ずっと、隣のばあちゃんの家で過ごした。学校に行っても楽しくなくて、一人で何もする気になれなくて、でも、一週間経ったその日の夜に聞いてしまったんだ。 彼はもう外国に行ってしまったと。俺の母さんとばあちゃんが話していた。彼は外国の小学校にいって父親と暮らしていると。 そこから、俺はいつもの日常に戻った。母さん達も最初は気にしていたが、次 の年に隣のばあちゃんが死んで、もう誰も彼のことを話す人はいなくなった。もちろん、彼は来なかった。ばあちゃんの葬儀にも、俺との約束の日にも。だから、思ったんだ。彼は本当に漫画の主人公だったんだと。 だから、もう会えないのだと。今考えれば、幼稚過ぎる考えだったが、その頃の俺は、自分を何かから守るのに、必死だったんだ。
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