流れ星

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あれから、20年。 俺は、31歳になった。 中高は何を思ったのか、親に頼み込んで、寮のある東京の私立に通い、何かに取りつかれたように、勉強と部活を頑張った。大学もそのままの流れで東京で探し、今度は何もしないまま4年間を過ごした。 高校と大学で変わったことがあったわけじゃない。高校で漫画のように青春を謳歌したわけでもない。ただ、無心になりたかった。大学を出た後は、田舎に戻って、親の農業の手伝いをした。別に仕事がなかったわけではない。しいて言うなら、本業は小説家。わけあって、大学時代に書いた小説が出版社に渡り、したかったわけでもないが、小説家デビューをした。自由気ままにとまではいかないが、自分の性格に合っているのか、それなりに売れている。まぁ、顔はあまり出したくないから、こうやって田舎に逃げてきたというのもある。 だが、最近、親がうるさい。 結婚はいつするだの、孫の顔はいつ見れるだの、酔う度にぶつぶつ言われるこちらの身にもなってほしい。 別に彼女がいなかったわけではない。逆に言えば、大学を卒業するまでほとんど彼女がいなかった時期はない。それなりにモテてはいた。ただ、いたというだけだったが。 こんな田舎に若者がいるはずもなく、恋人どうこう依然の話であって、いたとしても今までと同じでいつかは別れる。 そう、いつかは別れるのだ。
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