第2章 疑惑

2/33
前へ
/33ページ
次へ
 翌日。  同室の紀民が、ちょっと外に出たかと思うと、あわてふためいて帰ってきた。 「秦盟」 「何かあったのか?」 「役人が来ている」 「太学に役人がうろうろしているのは普通だろうが」 「違う、取り調べの役人だ。それも、冊社省」 「冊社省? 寺廟のことを司る部署と太学では、関係が浅いな」 「蓮華寺で、人が殺されたそうだ。それで、学生を取り調べたいと申請が出されたそうだ」 「蓮華寺……」  秦盟は、はっとした。  蓮華寺。薊花とときどき会っていた、あの、荒れ寺。  明るくなったら、学章を探しに足を運ぼうと思っていた場所の一つだ。  昨日は本堂に明かりが灯り、人が集まっている様子だった。  そこで、まさか、殺人とは!  まさか!  秦盟の嫌な予感は的中した。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加