脱却①

34/40
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
 ニコッと笑みを浮かべる李煌さん。  そんなことを当たり前のように言われると、 どう反応していいのか分からなくなる。  こういうのは本当に慣れない。  俺は無言のまま視線を前に向ける。 「あ、今照れたでしょ」 「はっ!?」  ギョッとして視線を彼に戻す。 「気付かれないと思ったのー?何年、君のことを見て来たと思ってるのさ」  冗談めかし込んで言う李煌さんも、 少し照れているようだ。  そんな李煌さんに口元が綻ぶ。 「そりゃ照れるよ。李煌さんにそんな風に言われたらね」 「あ、開き直ったね?もっと見ていたかったのになぁ」 「ダメだよ。貴重なんだから」 「自分で言うことなの?」  可笑しそうに笑う李煌さんを微笑ましく見つめた。
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!