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「李煌さん」
「なっ、何?」
「そこ座って。外で寒いかもしれないけど…」
言われるままにベンチに座った李煌さんの隣に、
俺も腰を下ろした。
冬はほとんど人気のない公園だ。
人目を気にせず渡すには丁度いい。
気持ちを落ち着かせたくてホットミルクティーを李煌さんに差し出す。
それを嬉しそうに飲む気配に、俺も緊張が解けて来た。
俺は買ったばかりの指輪を袋から取り出す。
「今は、安物で悪いんだけど…、いつかちゃんとしたの買うから我慢して」
「大河くん……。ううん、値段より気持ちだよ。俺にとってどれだけ価値があるかが大事だから、凄く嬉しい」
さっきまでテンパっていた李煌さんが、
どこか吹っ切れたように優しい笑顔を見せてくれた。
胸の中がギュッと温かい何かに締めつけられる思いがした。
「李煌さん、誕生日おめでとう」
俺は薬指ではなく、
鎖に通した指輪を李煌さんの首にそっと掛けた。
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