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何をいきなりと思いつつも、胸は弾まずにはいられないようだった。もしかしたら――。
「君のことが好きだよ」
それはとてもストレートな言葉だった。鼓動が高鳴る。その音が聞こえてしまいそうで、あたしは、俯き、何度かその言葉を心の中で繰り返した。
彼はこんな時、こんな風に真っ直ぐに言葉を伝えるのか。
照れ臭くて顔を上げられないまま、彼の次の言葉を待ってみる。
「僕と付き合ってください」
ああ、そしてこんな風に彼は告白するんだ。あたしの顔を覗き込んでそう告げた彼の顔は、初めて見る表情だった。
さっきまで踏み込む勇気などないと言っていたくせに。やられた。
頬が赤くなっていく感覚。
胸も熱くなって鼓動が激しい。
あたしは臆病にもすぐに返答が出来なかった。練習代にでもされたのかもしれないなんて、ぼんやり思う。
「君に好きな人が居るのはわかっているけど、これ以上我慢できそうになかったんだ。こんなもの貰っちゃったし」
あなたが好きです。うそ偽りなくあなたが好きです。
「……あたしもあなたが好きです」
言えた!
彼が瞠目した。
「な、なんだ~……」
へな~とまたあたしの隣に彼は腰を下ろした。
肩がぶつかる。こんなことは初めてだった。いつも互いの距離感に合わせて接していたから。
1mmの差が縮まった瞬間だった。
「ね、手をつないでも良い?」
「うん」
「ね、抱きしめても良い? 」
「うん」
そうして彼に抱きしめられたあたしは、まだ短い人生で一番幸福感でいっぱいだった。
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