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「あなたがすきです」
夢の中なら何度でも言えちゃうのに。
どうして現実では言えないのだろう。
あたしには好きな人が居る。
隣に居るだけで、同じ空気を吸うだけ、ほかほかする。
なのに最近、それだけでは満足できなくなって来た自分に気付いた。
彼とはいつも一緒に居る。いわゆる親友というやつなのだろう。きっと彼もそんな風に思っている。
男女の友情は成立しないなどと言う人も居るが、今のところは成立している。
だから、踏み出す一歩に甚大な勇気が必要だった。
手を伸ばせば抱きしめられる距離にいるのに、手を伸ばせば彼の大きな手に触れることも出来るのに。
あたしにはそれが出来ない。勇気がない。
彼は背こそ大きめであるが平々凡々な容姿をしている。クラスでも目立つ存在でもなく、物静か。文庫本が良く似合う。
だからライバルなんて居るとも思ってなかったし、彼の恋愛話など聞いたこともなかった。
女友達に言わせると、「うっかりしてるとさっさと誰かに持っていかれちゃうよ」、というくらいに彼はモテなくはないらしい。
そうすると、あたしは親友も恋も、どっちもいっぺんになくしてしまうことになるかもしれない。
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