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「……でさぁ、聞いてる?」
「え?」
「聞いてなかったわけね」
彼はため息を吐いた。
「僕にとっては一大事なんだよ。頼むから相談に乗ってくれよ」
「一大事って?」
そう聞き返すと彼は一通の封筒を差し出した。
「ら、ラブレター?!」
思わずあたしは大きな声を出してしまった。
そういえば誰かが言っていた。
彼は成績が良い。平々凡々だというのは、身近に居過ぎるから感じているものかもしれない。学年10位以内に入る成績を持つ彼に、いつ注目が浴びせられてもおかしくないことだった。
ちなみにあたしも勉強は得意で必ず学年10番には入っている。
ラブレター、か。
胸のうちで反復してみる。
余程あたしが怪訝な顔をしたのだろう。彼は目を泳がせた。
親友同士のあたしたちは普段一緒に居ることが多く、だから付き合ってると誤解している人のほうが多い。そこに件のラブレターとは。
「前に貰ってただろ? 呼び出されて告白されたりもあったじゃんか。頼むよ、対処法教えてくれ」
どうしようもない情けない表情を浮かべて懇願してくる。
あたしの場合、好きな人が居るからと上手く断っている。
たまたまあたしが今横にいて、だからそんなことを聞いてきたのだろうか。
今まではどうしていたのだろうか。
今までもこんなことがあったのだろうか。
ないからわたしに聞いてきたのかもしれない。
胸が締め付けられる。
わたしは自分自身を傷付けない言葉を探してみた。
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