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「メロおはよう。今日もおいしそうだね」
今日のお客第一号。は、数日前から変わっていない。メロはワンピースの裾を揺らして立ち上がった。
「それでも、お客さんが来なきゃ意味がないわ」
メロはため息とともに、最近常連になりつつあるニコルにそう言った。
「おはようニコル。いらっしゃい」
「うん、メロは今日も無表情だね。笑ってくれない?」
軽い調子で彼が言ってくるのもいつものこと。メロはまた小さくため息をついた。
「パンはおいしいんだからいいでしょ? どれにする?」
つれないなぁ、なんて言いながらニコルはかごとトングを手に取った。
正直メロだって、自分でもどうかなぁとは思っている。接客業で笑顔を作れないのは死活問題だろう。
だけど笑顔を浮かべるわけにはいかないのだ。
「そういや昨日、エンジェルパン店に行ってみたよ」
その店の名を聞いてメロの心はつきんと痛んだ。
町中にあるエンジェルパン店。立地の良さもさることながら、店主のアンジェリカは美しく、その笑顔のとりこになった人たちで人気のパン屋らしい。一方、味はというと――
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