第1章

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 異変に気付いたのは次の日だった。  いつものように、おいしくなれ、おいしくなれと願いを込めながら、笑顔でパンを焼いていた。しかし普段どおりに膨らまない。それなりに見栄えがいいものを味見してみたが、これがおいしくない。  昨夜の女の言葉を思い出していた。 『あなたが笑えば店は潰れる』  あれはこういうことだったのかと理解した。笑顔を浮かべればパンがまずくなる。そんな呪いだろう。  顔を強張らせながらもう一度パンを焼いてみると、今度はうまくいった。ほっと小さく笑みを浮かべると、急に手の中のパンがぱさぱさになってしまった。  焼き上がったあとでもあの呪いは効くのか――。  あの女が魔女だったことは、もう理解していた。だがなぜ魔女が自分なんかを呪うのか、メロには予想もつかなかったが。  ただ、すぐに考えなければならないことは一つ。味を取るか、笑顔を取るか。  考えるまでもなかった。
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